自然素材について考える|経年変化とともに育つ住まい
2021/04/11
自然素材の魅力は、単に「体にやさしい」ことだけではありません。
木の手触り、石の質感、漆喰や珪藻土の陰影、時間とともに深まる色合い。
自然素材は、年月を重ねるほどに表情を変え、住まい手の暮らしとともに少しずつ育っていく素材です。
今回は、自然素材を住まいに取り入れる意味と、その魅力について考えてみたいと思います。[
□自然素材とは何か
自然素材とは、無垢材、珪藻土、漆喰、コルク、天然リノリウム、石材など、自然由来の材料を活かした素材のことです。
工業製品にはない質感や表情を持ち、空間にやわらかさや奥行きを与えてくれます。
また、素材によっては調湿性や消臭性、肌触りのよさなど、暮らしを支える機能を持つものもあります。
参考写真:天然リノリウム/Forboカタログより
□自然素材がもたらす心地よさ
*手触りや質感が空間をやわらかくする
無垢材の床を素足で歩いたときの感触や、左官壁に光が当たったときの陰影は、視覚だけでなく身体感覚にも働きかけます。
自然素材は、空間を一瞬で華やかに見せるためのものではなく、日々の暮らしの中で静かに心地よさを支えてくれる存在です。
*時間とともに表情が変わる
自然素材は、使い込むほどに色合いや艶が変化していきます。
傷や色むらも、見方を変えれば暮らしの記憶として積み重なっていくものです。
新築時の美しさだけでなく、10年後、20年後にどのような表情を見せるのか。その時間の変化を受け止められることも、自然素材の大きな魅力です。
*健康的な住環境を考えるきっかけになる
自然素材は、化学物質への配慮やシックハウス症候群のリスク低減という観点から選ばれることもあります。
ただし、「自然素材だから必ず安心」と単純に考えるのではなく、素材の特性や施工方法、換気計画まで含めて総合的に考えることが大切です。
住まいの健康性は、素材だけでなく、空気の流れや温熱環境とも深く関わっています。
住まいの居心地は、間取りや温熱環境だけでなく、毎日触れる素材の質感や経年変化によっても大きく左右されます。
居心地そのものについては、「居心地について考える|住みやすさをつくる条件」でも詳しくご紹介しています。
参考写真:ヒノキ、十和田石の天然系素材_山懐庵/設計監理・片岡英和建築研究室
□素材ごとの特徴を理解する
*無垢材
無垢材は、木そのものの質感や温もりを感じられる素材です。
樹種によって硬さや色味、木目の表情が異なり、ヒノキ、スギ、ナラ、オークなど、それぞれに違った魅力があります。
やわらかい木は足触りがよく、硬い木は傷がつきにくいなど、使う場所や暮らし方に応じて選ぶことが大切です。
特に無垢材の床は、足触りや木目の表情によって空間の印象を大きく左右します。
床材が居心地に与える影響については、「床について考える(その1)|空間の印象を決める足元のデザイン」でもご紹介しています。
*珪藻土・漆喰
珪藻土や漆喰は、壁材として使われることの多い自然素材です。
調湿性や消臭性、独特の質感を持ち、光の当たり方によって豊かな陰影を生み出します。
ビニールクロスとは異なる落ち着きや奥行きを求める場合に、選択肢のひとつになります。
*天然リノリウム・コルク・石材
天然リノリウムやコルクは、やわらかさや足触り、メンテナンス性を活かしながら取り入れられる素材です。
石材は、ひんやりとした質感や重厚感があり、水まわりや浴室、玄関などで空間に緊張感や上質さを与えてくれます。
素材にはそれぞれ向き不向きがあるため、見た目だけでなく、使う場所や手入れのしやすさも含めて検討する必要があります。
参考写真:下阪本の家(滋賀県)/設計監理・片岡英和建築研究室
□自然素材は、手入れしながら付き合う素材
自然素材は、工業製品のように均一で変化の少ない素材ではありません。
湿度によって伸縮したり、紫外線によって色が変わったり、使い方によって傷がつくこともあります。
しかし、それらを欠点として捉えるのではなく、住まいとともに時間を重ねる変化として受け止めることもできます。
自然素材を選ぶということは、素材を「完成品」として見るのではなく、手入れをしながら長く付き合っていくことでもあるのです。
□まとめ
自然素材は、住まいに温もりや質感、時間の深みをもたらしてくれる素材です。
無垢材、珪藻土、漆喰、天然リノリウム、石材など、それぞれの素材には異なる表情と特性があります。
大切なのは、「自然素材だから良い」と一括りにするのではなく、その素材がどのような場所にふさわしく、どのような暮らしに寄り添うのかを考えることです。
住まいは、新築時が完成ではありません。
日々の暮らしの中で少しずつ表情を変え、家族の時間とともに育っていくものです。
自然素材を選ぶことは、そうした時間の変化を楽しみながら、長く愛着を持って住まいと向き合うことなのだと思います。
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