病院設計のポイント|患者とスタッフ双方に最適な空間を創るために大切なこと
2025/08/08
病院設計には、患者の安心と快適さ、医療スタッフの業務効率の両立が求められます。そこで本記事では、病院設計の基本理念やポイントを解説します。病院設計の依頼先を選定する際のポイントもまとめてありますので、ぜひ参考にしてください。
病院設計の基本理念と将来を見据えた計画

病院設計において重要なのは、「患者中心の空間」と「変化に対応する柔軟性」を両立させることです。現在だけでなく将来の医療ニーズを見据えた計画が、持続可能で高機能な病院づくりにつながります。
なぜ将来を見据えた設計が不可欠なのか
将来を見据えた病院設計は、長期的に施設を有効活用するために不可欠です。医療現場を取り巻く環境は、技術の進歩や社会構造の変化などによって常に進化していきます。
たとえば少子高齢化の進行により、外来中心から在宅医療との連携を重視する医療体制への移行が求められています。またコロナ禍を経て感染症対策が恒常的な課題となり、病室の個室化や隔離性の高さが重視されるようになりました。医療現場の変化に対応できない設計では、早期の改修や再設計が必要となり、運営コストの増加や患者の利便性低下を招く恐れがあります。
したがって建設当初から将来の医療ニーズや制度の変化を見据え、柔軟に対応できる構造や配置を計画することが、結果的に長寿命で価値の高い病院経営につながるのです。
変化に対応する柔軟性:ユニバーサルデザインと可変性のある設計
病院は、年齢や身体状況にかかわらず幅広い属性の患者が安心して利用できる場所でなくてはなりません。そのため、「ユニバーサルデザイン」を取り入れた設計が推奨されます。加えて将来のレイアウト変更に対応できる「可変性」を高めることで、時代に合った使い方が可能になります。
ユニバーサルデザインとは、すべての人にとって使いやすいように配慮された設計のことです。具体例として段差のない床や幅の広い廊下、バリアフリートイレ、視認性の高い案内表示などが挙げられます。高齢者や車椅子の利用者、妊婦、小さな子どもを連れた家族など、さまざまな立場の人が安心して利用できます。
可変性のある設計とは、壁の位置や部屋の用途などを変更できる構造設計のことです。たとえば複数の診察室を一つの大部屋につなげたり、検査スペースを拡張できるように設計しておくと、医療施設の使い勝手が大きく向上します。
ユニバーサルデザインや可変性のある設計を取り入れることで、患者層や社会情勢などの変化に柔軟に対応しやすくなります。患者にとっても医療スタッフにとっても快適で、長く愛される病院づくりにつながるのです。
機能性と効率性を追求した院内レイアウト

病院設計では、機能性と効率性を兼ね備えた院内レイアウトが求められます。患者の安心感を高めつつ、医療スタッフの動きやすさを考慮することで、医療の質とスピードの両立が可能となるのです。
患者とスタッフの動線分離:プライバシーと業務効率の向上
患者と医療スタッフの動線を分けて設計することは、プライバシーの配慮と業務効率の向上にとって重要です。動線を区別しない場合には、共通のスペースを使うことで患者の不安感が高まり、医療スタッフの移動や作業が妨げられる恐れがあります。
たとえば外来患者の受付から待合までの動線と医療スタッフ用の通路を分けることで、患者には落ち着いた空間が提供され、医療スタッフには無駄のない動線を確保できます。また救急搬送や手術などの特別な医療行為に用いるスペースを一般患者の動線から切り離すことで、迅速で安全な対応が可能です。
以上のように、患者と医療スタッフの動線分離は施設全体の人流をスムーズにし、医療サービスの質を向上させる鍵となります。
診察室レイアウトの最適化:快適な空間と適切な備品配置
診察室のレイアウトは、患者の安心感と医師の業務効率を両立させるために非常に重要です。特に狭すぎる空間や不適切な備品の配置は、診療行為の質に悪影響を与える恐れがあります。
そこで患者の目線から見て落ち着けるように配慮し、医療スタッフの無駄な動きを削減しましょう。
- 入口から直接ベッドが見えないように配置する
- 相談スペースと治療スペースを分ける
- スムーズに器具やカルテにアクセスできるよう、壁面収納や可動式ワゴンなどを配置する
- 医師と患者が自然に向き合えるように、椅子と机の配置を工夫する
- 十分な照明を確保しつつ、眩しすぎないように照明を配置する
- 患者のプライバシーを守るために、音の反響を抑える内装材を採用する
上記のような設計により、患者が安心して相談でき、医療スタッフの業務効率を高める診察室を整備できます。
廊下設計の重要ポイント:幅、バリアフリー、視認性
病院内にある廊下の設計では、「通りやすさ」と「安全性」を両立させるために、幅の広さとバリアフリー対応、視認性の高さが重要です。
具体的には、次のような設計を取り入れてください。
- 車椅子同士がすれ違えるように1.8メートル以上の幅を確保する(※)
- 段差のないフラットな床や手すり、転倒リスクを抑える床材を採用する
- 見通しの良さや明るい照明、分かりやすい案内表示で、利用者の安心感を高める
- 廊下の途中にベンチや待機スペースを設け、高齢者や体力に不安のある患者に配慮する
※参照元:厚生労働省「医療法等の一部を改正する法律案の概要」 (https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kaisei/tp1024-1_10.html)
廊下は単なる通路ではなく、患者にとっても医療スタッフにとっても快適で安全な移動空間として設計することが大切です。
部門配置とゾーニング計画
病院内の部門配置は、診療の連携や動線の効率性を左右するため、綿密なゾーニング計画が欠かせません。ゾーニングとは、目的や機能に応じて施設内に各エリアを配置する設計作業を指します。 基本的には静かな環境が求められるエリアと人の出入りが多いエリアを分離して、入院患者の安静を守ることが重要です。
- 手術室・ICUなどの高機能エリア :衛生環境や動線を考慮して、専用区画にまとめる
- レントゲン・MRIなどの検査エリア :各診療科と連携しやすいように配置する
- 受付・待合・診察などの外来エリア :互いに近接させて、移動距離を短縮する
- 患者搬送や物品供給などの裏側エリア:スタッフ専用ルートとして確保する
ゾーニングは建物全体の利便性を左右するため、初期段階での入念な計画と将来的な拡張性への配慮が重要です。
安全・安心を最優先するための病院設計アプローチ

病院設計では、安全性と安心感の保証が欠かせません。特に衛生環境と感染症対策は、患者と医療スタッフの双方を支える要素です。衛生的で効率的な病院運営を後押しするように、医療施設の構造を設計することが求められます。
環境衛生と清掃手順を支援する設計
衛生管理を支援する設計は、病院の安全性・安心感を根本から支えるために重要です。環境衛生作業や清掃を妨げる構造が設計されていると、いくらスタッフが努力しても限界が生じてしまいます。
効率的で衛生的に病院を運営するために、環境衛生活動や清掃作業のしやすい病院の構造を設計しましょう。
- 汚物処理室や清掃用具収納スペースを、適切な場所に配置する
- ホコリや汚れがたまりにくいように、床の角を丸く仕上げる
- 床や壁に、耐薬品性や防汚性のある洗浄しやすい素材を使用する
- 通路に、清掃用カートが通れる幅を確保する
- 水回り(トイレ・処置室・洗面所)に、排水勾配や防水処理を施す
- ごみやリネンなどの一時保管スペースを、各エリアに設ける
構造的な工夫によって、毎日の環境衛生活動や清掃作業を確実に行いやすくなり、病院全体の清潔さを高いレベルで維持することができます。
感染経路別予防策に対応した個室設計とゾーニング
感染症対策として重要なのが、感染経路に応じた個室設計とゾーニングです。空気感染・接触感染などのリスクを最小限に抑えるための基本的な考え方になります。
個室設計とゾーニングのポイントは、以下の通りです。
- 陰圧管理が可能な個室や隔離病室で、エアロゾル感染を防ぐ(※)
- 他の患者との接触を回避するために、感染症患者専用の出入口や通路を設ける
- 感染リスクの高い区域(発熱外来)とリスクの低い区域(一般外来)を分ける
上記のポイントを押さえて設計することで、感染症流行時の混乱を最小限に抑え、院内感染の防止に大きく貢献します。
機械換気と自然換気をバランスの組み合わせ
安全・安心な病院空間を設計するためには、機械換気と自然換気をバランスよく取り入れた空気環境の管理も大切です(※)。
どちらか一方だけに依存するのではなく、それぞれの利点を活かしましょう。
- 機械換気:計画的に給排気を行い、特定エリアにおける空気の清浄度を維持しやすい
- 自然換気:エネルギー効率が高く、心地よい空気の流れを生み出す
たとえば休憩室や事務室などでは窓や吹き抜けにより自然換気を促しつつ、感染リスクの高いエリアでは機械換気による陰圧・陽圧の調整で空気環境を厳密に制御することが可能です。ハイブリッドな換気の方法は、快適性と衛生性の両立に貢献します。
病院設計の依頼先の選定ポイント

病院設計は専門性の高い分野であるため、依頼先の選定が非常に重要です。依頼先の選定は、設計の質や使い勝手、法令・基準の遵守や安全性までに影響を与えます。ここでは、病院設計を成功に導くための依頼先選びのポイントをご紹介します。
病院設計の実績・専門知識
病院設計を依頼する際は、「設計事務所に医療施設の設計実績があるかどうか」を確認することが大切です。一般的な建築物とは異なり、病院設計には医療機器や感染対策などに関する専門的な知識が必要になります。
たとえば内科・外科といった診療科目や急性期・回復期といった診療機能の違いによって、必要な医療設備や空間が大きく異なります。医療施設の用途を理解して設計に落とし込める力があるかどうかは、過去の事例を見れば判断しやすいです。
医療施設に精通した設計事務所であれば、患者の安心感と医療スタッフの働きやすさを両立させる設計を提案できます。そのため実績と専門的な知識が、依頼先を選定する際に重視すべきポイントです。
法令・基準への対応力
病院設計には、建築基準法だけでなく、消防法や医療法、バリアフリー法、さらには感染症対策に関する各種ガイドラインなどの法令・基準も関係します。そのため、依頼先が法令・基準に対応できる力を備えていることが不可欠です。
具体的には、病室の床面積や通路幅、消防設備の設置義務などが法的に定められています。法令に違反すると許可が下りなかったり、運営開始後に是正命令が出たりする場合があります。設計段階で法令・基準を正しく理解し、必ず遵守しなくてはなりません。
医療施設の法令・基準を熟知した依頼先であれば、行政との協議や許認可の申請などにスムーズに対応できます。法令の遵守は病院経営の信頼性と安定性を左右するため、設計事務所の対応力を慎重に見極めましょう。
コミュニケーション力と信頼性
病院設計は、多くの関係者が関わりながら進めていく長期的なプロジェクトです。そのため、設計者のコミュニケーション力と信頼性が非常に重要です。
医療法人の経営者や医師、看護師などの声にしっかり耳を傾け、設計に反映してくれるかは、施設の使い勝手を左右します。また設計の変更や調整が必要になった場合には、柔軟かつ迅速に対応してもらえるかが問われます。
信頼できる設計事務所なら、単に図面を作成するだけでなく、相談や要望に応えながら「共に病院をつくり上げるパートナー」として対応してくれます。打ち合わせの方法や提案内容、説明の分かりやすさなども、依頼前にチェックしておきたいポイントです。
病院設計のご相談は片岡英和建築研究室にお任せください
病院設計には、高度な専門知識や豊富な設計実績、柔軟な対応力などが求められます。片岡英和建築研究室では、患者と医療スタッフの双方にとって快適性と機能性の高い空間を実現する設計をご提案しております。相談から設計、施工まで丁寧に対応いたしますので、安心してご相談ください。
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