打ち合わせについて考える(その2)|理想の暮らしを言葉にする時間
2021/09/04
家づくりの打ち合わせと聞くと、間取りや設備を決めるための「確認作業」を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、実際の打ち合わせは、単に要望を伝えるだけの時間ではありません。
どのような朝を迎えたいのか。休日をどのように過ごしたいのか。家族とどのような距離感で暮らしたいのか。
まだ言葉になっていない理想の暮らしを少しずつ見つけ、形にしていくこと。それが、家づくりにおける打ち合わせの本質なのだと思います。
□打ち合わせは、住まいの輪郭を描いていく時間
家づくりの打ち合わせは、計画段階から工事中、完成時まで長い時間をかけて続いていきます。
その中でも、最も重要なのは計画段階です。
資金計画や敷地条件の整理から始まり、間取り、性能、素材、設備、内外装の方向性など、住まいの根幹となる部分を一つひとつ決めていきます。
特に間取りは、建築確認申請とも関わるため、後から大きく変更することが難しくなる場合も少なくありません。
だからこそ、生活動線や居心地、将来の変化も見据えながら、予算とのバランスを調整し、住まいの輪郭を丁寧に描いていくことが大切です。
□工事中も、対話は続いていく
打ち合わせは、図面が完成したら終わりではありません。
工事が始まってからも、図面どおりに施工されているか、工程に遅れはないか、細かな納まりに問題はないかなどを確認しながら、建築家・施工者・住まい手が情報を共有していきます。
設計監理では、現場監督による施工管理とは異なる立場から、設計図書の意図が正しく実現されているかを確認します。
完成したときに「思っていたものと違った」とならないよう、対話は工事中も続いていくのです。
□理想は、整理されていなくてもよい
打ち合わせの前には、「きちんと希望をまとめておかなければ」と考える方もいらっしゃいます。
もちろん、好きな空間の写真や気になる事例を集めておくことは、イメージの共有に役立ちます。
しかし、最初から考えが整理されている必要はありません。
「開放的な家にしたいけれど落ち着きも欲しい」「庭は欲しいけれど手入れは大変そう」「木の温もりは好きだけれどメンテナンスが不安」など、矛盾した想いがあっても構いません。
むしろ、その揺らぎの中にこそ、その人らしい暮らしのヒントが隠れていることがあります。
辻褄が合っていなくても大丈夫です。思いついたことや気になっていることは、写真や雑誌の切り抜き、簡単なメモなど、どのような形でも構いませんので、遠慮なく共有してみてください。
□余白を持って、打ち合わせに臨む
家づくりの打ち合わせは、一度で終わるものではありません。
長い時間をかけて繰り返し行われ、そのたびに新たな発見や迷いも生まれます。
一回ごとの打ち合わせも内容が濃く、多くの選択を伴うため、想像以上にエネルギーを使うことがあります。
だからこそ、打ち合わせの前後には予定を詰め込みすぎず、少し余白を持って臨むことをおすすめします。
焦らず、納得しながら積み重ねていく時間そのものが、後悔のない家づくりにつながっていきます。
□まとめ
家づくりの打ち合わせとは、正解を確認するための作業ではありません。
まだ言葉になっていない理想の暮らしを、対話を通して少しずつ見つけていく時間です。
住まい手の想いと、建築家の経験や知識を重ね合わせながら、その家族らしい答えを探していくこと。
家づくりは、一人ではできません。
だからこそ、遠慮なく話し、迷い、時には立ち止まりながら、一緒に住まいの輪郭を描いていくことが大切なのだと思います。
理想の暮らしは、最初から完成された形で存在しているわけではありません。打ち合わせという対話の積み重ねの中で、少しずつ言葉になり、住まいとして形づくられていくのではないでしょうか。
株式会社 片岡英和建築研究室・建築家:片岡英和
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