ユニバーサルデザインについて考える|普遍的なバリアフリー計画
2021/09/11
バリアフリーという言葉を聞くと、高齢者や介護が必要な方のための住宅を思い浮かべるかもしれません。
しかし、本来のユニバーサルデザインとは、年齢や身体能力、障害の有無に関わらず、誰もが自然に使いやすい環境を目指す考え方です。
子どもを抱きかかえる親、ベビーカーを押す家族、ケガをしている人、重い荷物を持って移動する人、そして将来の自分自身。
住まいは、人生のさまざまな場面を受け止める器でもあります。
だからこそ、特別な誰かのためではなく、「誰もが心地よく暮らせる住まい」という視点から、普遍的なバリアフリー計画について考えてみたいと思います。
なお、ユニバーサルデザインの考え方については、以前ご紹介した『ロン・メイスのユニバーサルデザイン』でも詳しく触れていますので、あわせてご覧ください。
□ユニバーサルデザインは「将来への備え」ではない
バリアフリーというと、「いつか必要になるもの」という印象を持たれることがあります。
しかし、実際には今の暮らしの中にも、その必要性は数多く存在しています。
小さな子どもが転ばないように段差をなくすこと。ベビーカーを押したまま移動しやすいこと。荷物を持ちながら片手で開閉できる引き戸を採用すること。
こうした配慮は、高齢者だけでなく、多くの人にとっての使いやすさにつながっています。
ユニバーサルデザインとは、特別な仕様を追加することではなく、誰もが自然に使いやすい住まいを考えることなのだと思います。
□変化を受け止めるための準備
家族構成や身体状況は、年月とともに変化していきます。
今は必要なくても、将来的に手すりを取り付けられるよう壁の下地を準備しておくことや、車椅子での利用も想定して出入口や水まわりにゆとりを持たせておくことは、将来への安心につながります。
また、ドアを引き戸にすることで、車椅子利用時だけでなく、荷物を持っているときや小さな子どもを抱えているときにも開閉しやすくなります。
住まいを完成形として固定するのではなく、変化を受け止められる余白を持たせることも、普遍的なバリアフリー計画のひとつです。
参考資料:建築設計標準(基本寸法)/国土交通省HPより
□場所ごとに考えるユニバーサルデザイン
*浴室
浴室は水に濡れるため、住まいの中でも転倒リスクの高い場所です。
滑りにくい床材を採用し、出入口の段差をなくすこと。必要に応じて手すりを設置しやすい計画としておくことが大切です。
また、浴槽の高さを抑えることで、子どもから高齢者まで安全に出入りしやすくなります。
*トイレ
トイレは、将来的な身体状況の変化を考慮し、寝室との距離や動線も含めて検討したい場所です。
可能であれば少しゆとりのある広さを確保することで、車椅子利用や介助が必要になった際にも対応しやすくなります。
また、将来的な手すり設置に備えた下地補強も有効です。
参考資料:建築設計標準(小規模便所)/国土交通省HPより
*リビング
家族が最も長い時間を過ごすリビングは、できる限り段差のない計画としたいものです。
高齢者の転倒事故は、庭に次いでリビングで多いとも言われています。
また、急な体調不良や転倒があった際にも家族が気づきやすいよう、過度に仕切らず、ゆるやかにつながる空間構成とすることも安心につながります。
参考資料:建築設計標準(小規模便所)/国土交通省HPより
□まとめ
ユニバーサルデザインとは、特別な誰かのための設計ではありません。
子どもから高齢者まで、健康なときも、体調を崩したときも、その時々の暮らしに自然に寄り添えること。
住まいは、家族の変化を受け止めながら、何十年もの時間をともに過ごしていく存在です。
だからこそ、年齢や身体状況の違いを超えて、誰もが心地よく暮らせる普遍性を備えていることが大切なのではないでしょうか。
ユニバーサルデザインとは、未来のための特別な備えではなく、「誰もが使いやすいこと」を丁寧に積み重ねていく住まいのあり方なのだと思います。
なお、一定規模以上の建築物には、バリアフリー法における「建築物移動等円滑化基準」や「建築物移動等円滑化誘導基準」が定められています。また、面積基準以下であっても、地方自治体によっては「福祉のまちづくり条例」など独自の基準が設けられている場合がありますので、計画地ごとの確認も大切です。
資料:国土交通省/バリアフリー法パンフレット(抜粋)
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