床について考える(その2)|素材との距離感をデザインする
2021/10/19
住まいの中で、私たちは想像している以上に床と関わりながら暮らしています。
朝起きて最初に足をつける場所。子どもが寝転んで遊ぶ場所。椅子に座って食事をする時間。時には素足でくつろぎ、時には家族やペットと同じ時間を過ごす場所。
床は、建築の中でも最も身体に近い存在です。
だからこそ、見た目だけではなく、触れたときの感触や温度、手入れのしやすさなどを含めて考えることが、心地よい住まいにつながっていきます。
□素材によって、暮らしとの距離感は変わる
床材にはさまざまな種類があり、それぞれに異なる魅力があります。どの素材を選ぶかによって、住まいとの付き合い方や身体との距離感も少しずつ変わっていきます。
*複合フローリング
現在の住宅で最も広く用いられている床材です。傷や汚れに強く、日常の手入れがしやすいことに加え、床暖房に対応した商品も多くあります。
表面に天然木を用いたタイプは、機能性と木の質感を両立しやすく、現代の暮らしにも取り入れやすい素材です。
自然素材の風合いを感じながらも、過度なメンテナンスの負担を抑えたい方に適しています。
参考写真:タイル貼りのリビング_ガレージハウス(愛知県)/設計監理・片岡英和建築研究室
*畳
柔らかな感触と香りが特徴で、日本の暮らしに根付いてきた床材です。
座る、寝転ぶといった身体の使い方を自然に受け止めてくれる懐の深さがあります。
畳の上で過ごす時間には、どこか気持ちを緩めてくれる安心感があります。
*カーペット
足触りが柔らかく、保温性や吸音性にも優れています。
静かな時間を過ごしたい寝室や、落ち着いた雰囲気を求める空間に適しています。
転倒時の衝撃を和らげるため、小さなお子さまや高齢のご家族がいる住まいにも安心感を与えてくれます。
*クッションフロア
耐水性や清掃性に優れ、水まわりで広く用いられている素材です。
機能性とコストのバランスが良く、日常の負担を軽減してくれる実用性の高い床材といえます。
□場所によって、求められる素材は変わる
すべての部屋を同じ床材で揃える必要はありません。
キッチンや洗面室では掃除のしやすさを重視し、リビングでは素足で過ごしたくなる心地よさを優先する。寝室では静けさを、玄関では耐久性を大切にする。
その場所でどのような時間を過ごすのかによって、ふさわしい素材は変わっていきます。
住まい全体を一律に考えるのではなく、それぞれの居場所に合わせて素材との距離感を整えることが大切です。
□家族の暮らしに寄り添う素材を選ぶ
小さなお子さまや高齢のご家族がいる場合には、転倒時の安全性も大切な視点になります。
また、ペットと暮らす場合には、滑りにくさや傷への配慮も必要になるでしょう。
床材は単なる仕上げではなく、日々の動作や身体感覚を支える存在でもあります。
家族構成やライフスタイルに合わせて選ぶことで、住まいはより自然に暮らしへ寄り添っていきます。
□まとめ
床は、住まいの中で最も身体に近い建築の要素です。
見た目の美しさだけではなく、触れたときの感触や温度、手入れのしやすさ、そして家族の暮らし方に目を向けながら選ぶこと。
素材との距離感を丁寧に整えることで、何気ない日常は少しずつ心地よいものへと変わっていきます。
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