間取りについて考える(その3)|家族の変化を受け止める住まい
2021/10/12
住まいづくりを考えるタイミングは、結婚や出産、子どもの入園や入学など、家族の節目と重なることが少なくありません。
だからこそ、「子育てしやすい間取りにしたい」と考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、住まいは子どもが小さい数年間だけを支えるものではありません。
子どもは成長し、自分の時間を持ち、やがて独立していきます。そして、夫婦もまた年齢を重ねながら、暮らし方を少しずつ変化させていきます。
大切なのは、その時々の暮らしに寄り添いながら、家族の変化を受け止められる住まいを考えることなのだと思います。
□家族の気配がつながる場所をつくる
小さな子どもがいる時期は、家事をしながらでも子どもの様子を感じられることが安心につながります。
キッチンの近くにスタディスペースやタタミコーナーを設けたり、リビングの延長として遊び場を計画したりすることで、家族がそれぞれ別のことをしていても、同じ空間の中で気配を感じながら過ごすことができます。
見守ることと、干渉しすぎないこと。そのちょうどよい距離感は、子育ての時期に限らず、家族が心地よく暮らすための大切な要素なのかもしれません。
参考写真:予備の子供部屋_スキップフロア住宅(滋賀県)/設計監理・片岡英和建築研究室
□収納は、暮らしの変化を受け止める余白
子どもが小さい頃は、おもちゃや絵本、衣類など、思っている以上に物が増えていきます。
適材適所に収納を設けることで、片付けやすさだけでなく、「自分でしまう」という習慣も育まれていきます。
また、収納は単なる物置ではなく、暮らしの変化を受け止める余白でもあります。
今は子どものための収納でも、将来は趣味の道具や季節用品を収める場所になるかもしれません。用途を決めすぎずに計画することで、住まいは時間の経過とともに柔軟に役割を変えていきます。
□子ども部屋は、完成させすぎない
子ども部屋は、最初から用途を固定しすぎないことも大切です。
幼いうちは広く使い、成長に合わせて仕切る。思春期には一人の時間を大切にできる場所とし、独立後には書斎や趣味室、客間として活用する。
住まいに少しの余白を残しておくことで、家族の変化に合わせて使い方を更新していくことができます。
完成された間取りではなく、変化を受け入れられる器として住まいを考えることが、長く住み続けるための工夫につながります。
参考写真:キッチンとタタミスペース_変形敷地の住宅(京都市)/設計監理・片岡英和建築研究室
□これからの暮らしにも目を向ける
住まいは、子育てのためだけのものではありません。
段差を少なくすることや、将来的に手すりを設置しやすいように下地を準備しておくことは、小さな子どもにとっての安全性だけでなく、将来の安心にもつながります。
また、子どもが独立した後の住まい方を想像しておくことも大切です。
夫婦それぞれの趣味の時間を楽しむ場所として使うこともあれば、帰省した子どもや孫を迎える客間として活用することもあるでしょう。
今の暮らしと、これからの暮らし。その両方を見つめながら計画することで、住まいはよりしなやかに家族へ寄り添っていきます。
□まとめ
子育てしやすい住まいとは、子どものためだけにつくられた家ではありません。
子どもの成長や独立、夫婦のこれからの時間まで受け止めながら、その時々の暮らしに寄り添える住まいのことなのだと思います。
家族は変化していきます。
だからこそ住まいもまた、その変化を受け止める余白を持っていることが大切なのではないでしょうか。
変わらない家ではなく、変化を受け止められる家。そのしなやかさが、年月を重ねても愛着を持って暮らし続けられる住まいにつながっていくのだと思います。
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