トイレについて考える|住まいの質は小さな空間から
2021/12/04
住まいを考えるとき、リビングやキッチン、外観のデザインには自然と意識が向きます。
一方で、トイレについては、限られた面積の中で機能を満たせばよい場所として、後回しにされることも少なくありません。
しかし、トイレは家族全員が毎日使う、とても身近な空間です。
一日に何度も使う場所でありながら、一人になれる静かな場所でもあります。
住まいの質は、広い空間や目立つ設備だけで決まるものではありません。
むしろ、こうした小さな空間をどのように考えるかに、その家の心地よさが表れるように思います。
□トイレは、暮らしの流れの中で考える
トイレの位置を考えるときに大切なのは、単に間取りの余白に配置するのではなく、暮らしの流れの中で自然に使える場所を見つけることです。
リビングやダイニングに近すぎると、音や気配が気になることがあります。
一方で、寝室や洗面室から遠すぎると、夜間や忙しい朝の動線に負担が生まれます。
小さなお子さまがいるご家庭、高齢のご家族がいるご家庭、来客の多い住まいなど、トイレに求められる距離感はそれぞれ異なります。
大切なのは、誰にとっても使いやすく、暮らしの中で無理のない位置に整えることです。
参考写真:タンクレス便器(SATIS/LIXIL)
□小さな空間だからこそ、落ち着きが大切になる
トイレは、住宅の中でも特に面積の小さな空間です。
だからこそ、壁や床、照明、素材の選び方によって印象が大きく変わります。
明るく清潔感のある空間にするのか、少し落ち着いた色合いで静かな雰囲気をつくるのか。
住宅全体の空気感とつながるように考えることで、トイレだけが唐突に浮くことなく、住まいの一部として自然に馴染みます。
小さな場所だからこそ、余計なものを足しすぎず、素材や明るさを丁寧に整えることが心地よさにつながります。
□清掃性や素材選びも、日々の快適さを支える
トイレは水まわりであり、汚れやすい場所でもあります。
そのため、床や壁には、掃除のしやすさや耐水性にも配慮した素材を選ぶことが大切です。
見た目の美しさだけでなく、日々の手入れがしやすいこと。
汚れがたまりにくく、清潔な状態を保ちやすいこと。
こうした小さな配慮は、住み始めてからの快適さに大きく関わります。
設備についても同じです。
デザイン性や機能性だけでなく、掃除のしやすさ、故障時のメンテナンス、将来的な交換のしやすさまで含めて考えることで、長く安心して使える空間になります。
参考写真:パステルタイルを使ったトイレ_長吉出戸ビル(大阪市)/設計監理・片岡英和建築研究室
□将来の暮らしに備える余白を持たせる
住まいは、完成した瞬間だけのものではありません。
子どもの成長、家族構成の変化、年齢を重ねることによる身体の変化など、暮らしは少しずつ変わっていきます。
今は必要がなくても、将来的に手すりを設置できるようにしておくこと。
出入りや立ち座りに無理のない寸法を確保しておくこと。
介助が必要になった場合も想定し、少しのゆとりを持たせておくこと。
そうした備えは、特別なことではなく、長く住み続けるための自然な設計の一部です。
□まとめ
トイレは、住まいの中では小さな空間です。
しかし、その小さな空間をどう考えるかによって、日々の暮らしの感じ方は大きく変わります。
位置、明るさ、素材、掃除のしやすさ、将来への備え。
一つひとつは小さなことでも、それらが積み重なることで、住まい全体の心地よさにつながっていきます。
大きな空間だけでなく、小さな場所にもきちんと目を向けること。
そこに、長く愛着を持って暮らせる住まいの質が表れるのだと思います。
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