ZEB Readyとは?|環境性能と快適性を両立させる省エネ建築の考え方について
2026/05/26
ZEB Ready(ゼブ・レディ)とは、建物のエネルギー消費を大幅に削減し、快適性や環境性能を高めた次世代型の建築基準です。高い省エネ性能を持ちつつ、ZEBとは異なり再生可能エネルギーの導入を一部にとどめた段階の建物を指します。そこで本記事では、ZEB Readyのメリットから認証取得までのステップまで整理しました。
株式会社片岡英和建築研究室は、経済産業省「ZEBプランナー」に登録されており、環境性能と空間性を両立する建築設計に取り組んでいます。
実際に、京都信用保証協会および株式会社SAITOのプロジェクトでは、ZEB Readyよりも上位基準となる「Nearly ZEB」を取得しています。単なる省エネ性能だけでなく、快適性・事業性・企業価値向上まで含めた建築計画を重視しています。
ZEB Readyとは?
まず、ZEBの概要やZEB Readyの定義・技術的要件を分かりやすく解説します。
そもそもZEBとは?
ZEBとは、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロに近づけることを目指す建築物です。「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略称で、省エネ技術や再生可能エネルギーを組み合わせることで、建物全体のエネルギー消費量を最小限に抑えます。
具体的には、高断熱・高気密の外皮設計や高効率空調、LED照明、太陽光発電などを導入し、エネルギーの消費と創出をゼロに近づけます。ZEBを4段階に分類されています(※1)。
- ZEB:一次エネルギー消費量を100%以上削減
- Nearly ZEB:一次エネルギー消費量を75%以上削減
- ZEB Ready:一次エネルギー消費量を50%以上削減
- ZEB Oriented:用途・規模に応じて30〜40%以上削減
ZEBは、省エne技術の活用だけではなく、創エネ性能を搭載した建築物です。建築分野のカーボンニュートラル実現に向け、国が重点的に支援しています。
※1参照元:環境省「ZEBの定義」
ZEB Readyの定義
ZEB Readyとは、再生可能エネルギーを導入しなくても、年間の一次エネルギー消費量を50%以上削減している建築物です。ZEBの4段階で上から3番目に位置します。
ZEBを完全に達成するには、太陽光発電などの創エネ設備の導入が必要ですが、建築物の立地条件やコストなどの制約から難しい場合があります。そのため、まずは建物自体の省エネ性能を最大限まで高めるために、ZEB Readyを目標に設定できるのです。
ZEB Readyの評価は、「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)」を通じて行われ、省エネ性能が数値で可視化されます(※2)。ZEB Readyの認証を受けることで、環境性能の高さを客観的に示すことができ、不動産価値の向上や補助金の申請などで有利になります。
つまり、ZEB Readyは「ゼロエネルギーを目指す途中段階」でありながら、企業や自治体にとって現実的な第一歩になります。初期費用とエネルギー削減率のバランスが取れた省エネ建築物です。
※2参照元:環境省「ZEBに関連する評価・認証・表示制度」(https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/09.html)
ZEB Readyの技術的要件
ZEB Readyを達成するには、「高断熱化」と「高効率設備」の省エネ技術が欠かせません。省エネ技術を駆使して建築物を設計・運用することで、エネルギー消費量を50%以上削減することが可能になります。
高断熱化では、建物の外壁や窓、屋根の断熱性能を高め、外気温の影響を受けにくくすることが重要です。高断熱化により、冷暖房負荷を大幅に低減できます。また、高効率設備として、省エネ型の空調・照明・給湯・換気システムを導入します。全熱交換型換気システムやLED照明、インバータ制御の空調機などが代表的です。
それから最適制御技術によって、エネルギーの無駄を防ぐことも求められます。
- 人感センサーや照度センサーを活用して照明を自動制御する
- ゾーニング制御技術で、空調をエリアごとに制御する
- エネルギーマネジメントシステム(BEMS)で、リアルタイムにエネルギー使用量を可視化・分析する
ZEB Readyでは、単に高断熱建材と高効率設備を導入するだけでなく、建物全体でエネルギーを最適化する仕組みが重要です。設計段階からZEBのプランナーや専門家と連携することで、より効果的にZEB Ready化が実現できます。
ZEB Ready認証を取得する5つの主要メリット

ZEB Readyの認証を取得することで、建物の環境性能が客観的に評価され、エネルギーコストの削減だけでなく、企業価値や社会的信頼性の向上にもつながります。ここでは、ZEB Readyの認証取得で得られる5つの主要なメリットについて詳しく解説します。
不動産価値の向上と市場での差別化
ZEB Readyの認証を取得した建物は「高付加価値な不動産」として評価されやすくなります。ZEB Readyの認証は、省エネ性能の高さや快適な室内環境を保証する指標であり、テナントや購入希望者にとって魅力的な選択肢となるからです。
企業の環境意識の高まりと不動産投資における「ESG評価(環境・社会・ガバナンス)」への興味・関心が増加しています。ZEB Readyの認証を取得した建物は、環境に配慮した運用が行われていることを客観的に示せるため、特に大手企業や自治体の入居・利用条件に合致しやすくなるのです。
不動産取引においても、「環境性能に優れた建物は空室リスクが低い」「長期的に賃料水準を維持できる」と高評価を得やすくなります。つまり、ZEB Readyの認証取得は、単なる省エネ施策に留まらず、資産価値を高める投資戦略の一環として有効です。
光熱費の大幅な削減とライフサイクルコストの最適化
ZEB Ready化により、建物の光熱費を大幅に削減できます。省エネ技術の導入は短期的なコスト削減だけでなく、建物の長期運用における「ライフサイクルコスト(LCC)」の最適化にもつながるのです。
例えば、高断熱仕様の外壁や窓、高効率的な空調設備・LED照明などを導入することで、一次エネルギー消費量を50%以上削減することを目指します。年間の電気代や冷暖房費を抑制しながら、長期的にランニングコストの削減が可能です。
また、ビルエネルギーマネジメントシステム(BEMS)を導入すれば、使用状況をリアルタイムで可視化できるため、運用中の無駄なエネルギー消費も減らせます。省エネ建築は初期投資が高く見えるものの、長期的には維持費を抑えられるため、結果として経済的に優れた選択肢です。
企業の環境貢献(CSR)とブランドイメージの向上
ZEB Readyの認証取得は、企業の社会的責任(CSR)を果たす有効な手段です。環境への配慮や地域社会への貢献などを具体的な形で示すことができ、取引先・顧客・従業員からの信頼性が高まります。
近年は、企業のESG経営(環境・社会・ガバナンスを重視する経営)の注目度が高まっています。ZEB Readyの認証を取得したオフィスや商業施設などは、CO₂排出量削減の貢献を具体的に示せるため、サステナビリティレポートやIR資料などにも活用可能です。上場企業の多くが、脱炭素戦略の一環として「自社ビルのZEB化」を採用しています。
さらに、環境に配慮した建物で働くことは、社員の誇りやモチベーションにもつながります。ZEB Ready化は企業ブランディングの施策となり、採用力の向上にも寄与します。結果として、社会的信頼とブランドイメージの両面でプラスの効果をもたらすのです。
各種補助金・助成金制度の活用
国や地方自治体では、ZEB化を推進するための補助金・助成金制度を設けています。制度を活用することで、初期費用の負担を大幅に軽減できる点が大きなメリットです。
以下のような制度を活用すれば、省エネ設備や高断熱外皮などの導入が対象となり、費用負担を軽減できます。
- 環境省の既存建築物省エネ化推進事業
- 経済産業省の省エネルギー投資促進支援事業
補助金・助成金制度を活用すれば、コストを抑えながら高性能な省エネ建築を実現できるため、導入のハードルが大きく下がります。
快適性と知的生産性の高い室内環境の実現
ZEB Readyの建物は、省エネ性能だけでなく「人が快適に過ごせる環境」を重視して設計されます。温度・湿度・照明・換気などを最適化することで、居住者やオフィスワーカーの集中力・生産性の向上につながるのです。
例えば、外気の影響を抑えた高断熱な空間は、季節を問わず温度差が少なく、快適性を維持できます。また、照度センサーを用いた自然光の活用や二酸化炭素濃度を感知して自動換気を行うシステムなどにより、気分よく作業ができ、疲れにくい空間を整備できます。快適性と生産性の高い室内環境は、特にオフィスや教育施設などで効果を発揮します。
人間の活動と建物のエネルギー効率を同時に高めるZEB Readyは、まさに「働きやすさと環境性能の両立」を実現する設計思想です。省エネだけでなく、企業の業績向上にも寄与します。
ZEB Ready認証取得までのステップ

ZEB Readyの認証を取得するステップは、建物の用途や新築・改修などによって異なります。新築の場合は主に2年間、既存建築物の場合は約3年間をかけて、設計から施工、評価、報告までの各ステップを丁寧に進める必要があります。ここでは、それぞれのステップについて詳しく解説します。
新築建築物の場合(標準2年間のフロー)
新築建築物のZEB Ready認証を取得するためには、設計段階から省エネ性能を組み込むことがポイントです。基本設計の段階からZEBを前提とした計画を立てることで、効率的に認証を取得できます(※3)。
1年目は、建築計画の立案からスタートします。ZEBプランナー(登録された専門家)と連携し、断熱性能や空調・照明・給湯などの高効率設備の選定を進めます。BELS評価(建築物省エネ性能表示制度)を取得し、省エネ性能を客観的に数値化してください。また、エネルギーシミュレーションを実施し、50%以上の一次エネルギー消費量の削減が達成できる設計であることを確認します。
2年目には、補助金の申請・交付決定を経て施工を開始します。設計通りの断熱性能・設備仕様が確保されているかを随時確認しながら、完成後には竣工検査を実施します。最終的に実績報告書を提出し、審査を経てZEB Ready認証が交付されます。省エネ性能だけでなく、建物全体の品質や快適性も高まるのが特徴です。
以上2年間の流れを確実に進めるためには、早い段階で専門家と協議を始めることが重要です。特に設計初期における断熱仕様や高効率設備の計画が、施工後の省エネ性能に大きく影響します。
※3参照元:環境省「ZEB化実現までの流れ」
既存建築物の場合(標準3年間のフロー)
既存建築物をZEB Ready化する場合は、新築よりも多くのステップが必要です。現状の建物性能を正確に把握し、効果的な改修計画を立てることが成功のポイントになります(※4)。
1年目は、「ZEB化可能性調査」から始まります。現行のエネルギー使用状況や設備性能、建物外皮の断熱性能などを詳細に分析し、省エネ性アップの可能性を調査します。省エネ改修の優先順位を整理し、ZEB Ready達成のための技術的課題を明確にしましょう。
2年目は、設計仕様書の作成と詳細設計を行います。改修に適した高効率空調やLED照明などの選定、外壁・窓の断熱改修、BEMS導入などを検討します。必要に応じて、再生可能エネルギーの部分的導入(太陽光発電など)も計画に含めることで、省エネ効果が向上します。補助金・助成金申請の計画も、並行して進めます。
3年目は、補助金の申請から施工・実績報告までを行います。改修工事の際には、既存設備との連携や建物利用中の安全確保などの配慮が必要です。施工完了後には竣工検査を実施し、一次エネルギー消費量削減の効果を実測データで評価します。実績報告書を提出し、SII(一般社団法人 環境共創イニシアチブ)の審査を経て、正式にZEB Ready認証が交付されます。
既存建築物のZEB Ready化は、単なるリフォームではなく「長寿命化」「資産価値の向上」を同時に実現するプロジェクトです。冷暖房効率の改善による光熱費削減に加え、入居者の快適性や資産価値の向上にもつながるため、中長期的な視点での投資効果が期待できます。
※4参照元:環境省「ZEB化実現までの流れ」
【事例紹介】ZEB Ready認証を取得した建築物

片岡英和建築研究室のNearly ZEB実績
株式会社片岡英和建築研究室では、環境性能と快適性を両立する建築設計に取り組んでおり、実際のプロジェクトにおいてNearly ZEB認証を取得しています。
京都信用保証協会のプロジェクトでは、高断熱外皮・高効率空調・自然採光計画などを組み合わせることで、省エネ性能と執務環境の快適性を両立しました。
また、株式会社SAITOのプロジェクトでもNearly ZEBを取得し、企業価値向上や長期的なランニングコスト削減まで見据えた建築計画を実現しています。
ZEBは単なる設備導入ではなく、建築そのものの性能や空間設計、運用計画まで含めて総合的に検討することが重要です。
ZEB Readyの認証を取得した建築物は、全国で増加しています。オフィスビルや庁舎、教育施設といった幅広い用途の建築物に、省エネ性と快適性を両立する設計が導入されています。ここでは、「ダイキン工業福岡ビル」と「美幌町役場新庁舎」の事例をご紹介します。
ダイキン工業福岡ビル
ダイキン工業福岡ビルは、既存ビルの改修によってZEB Ready認証を取得した代表的な事例です。改修でもZEB Ready化は十分に実現できることを示した好事例といえます。
本プロジェクトでは、空調メーカーとしての技術力を生かし、ビル全体の省エネ性能を段階的に向上させました。具体的には、高効率空調機の導入やLED照明への切り替え、BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)による最適制御などを実施しています。特に、執務室の使用状況に応じて空調と照明を自動制御する仕組みを採用し、エネルギーの無駄を大幅に削減しました(※5)。
改修の結果、一次エネルギー消費量が50%以上削減され、ZEB Readyの基準を満たしました。新築に比べて制約の多い改修工事であっても、設備と制御の工夫によって高い省エネ効果を実現できることを証明した事例です。
※5参照元:
美幌町役場新庁舎
北海道美幌町の新庁舎は、寒冷地におけるZEB Readyの先進事例です。厳しい気候条件下でもZEB Readyは実現可能であることを示しています。
美幌町は冬季の気温が低く、暖房の使用量が高い地域です。そこで新庁舎の設計では、高断熱・高気密の外皮性能を徹底し、熱損失を最小限に抑える工夫がなされました。さらに、地域特性に合わせた地中熱ヒートポンプや高効率空調システムを採用し、再生可能エネルギーの導入も一部で実施しています(※6)。
また、執務環境の快適性にも配慮し、照明や空調をゾーニング制御することで、必要なエリアだけを効率的に稼働させています。結果として一次エネルギー消費量を50%以上削減し、寒冷地でもZEB Readyの基準をクリアしました。地域の公共施設として、脱炭素社会のモデルケースとなる事例です。
※6参照元:
Nearly ZEB・ZEB Ready等省エネルギー建築設計のご相談について
株式会社片岡英和建築研究室は、経済産業省登録のZEBプランナーとして、ZEB Ready・Nearly ZEBを見据えた建築設計を行っています。
京都信用保証協会や株式会社SAITOでのNearly ZEB取得実績をはじめ、省エネ性能だけではなく、空間性・快適性・企業価値・事業性まで含めた建築計画をご提案しています。
オフィスビル・公共施設・工場・宿泊施設など、環境性能を重視した建築をご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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株式会社片岡英和建築研究室
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