吹抜けについて考える|光とつながりを生み出す断面のデザイン
2021/04/28
吹抜けのある住まいに憧れを抱く方は少なくありません。
見上げたときの開放感。
高い位置から差し込むやわらかな光。
家族の気配がどこかで感じられる安心感。
吹抜けは、単に「天井を高くすること」ではなく、光や空気、人のつながりを立体的にデザインする建築的な手法のひとつです。
今回は、吹抜けの魅力と、住まいに取り入れる際に大切にしたい視点について考えてみたいと思います。
□吹抜けは「断面」をデザインすること
間取りというと、平面的な部屋の配置を思い浮かべることが多いかもしれません。
しかし、建築には「断面」というもうひとつの視点があります。
天井の高さ。
視線の抜け。
上下階の関係。
光の入り方。
空気の流れ。
吹抜けは、そうした断面的な関係性を豊かにする装置でもあります。
床面積は変わらなくても、縦方向の広がりによって、住まいは想像以上の開放感を得ることができるのです。
吹抜けは「断面」のデザインですが、その背景には、家族がどのような距離感で暮らしたいのかという問いがあります。
間取りとは、単なる部屋の配置ではなく、暮らしの関係性を形にしていくことなのかもしれません。
詳しくは、「間取りについて考える(その1)|暮らしの関係性をデザインする」でもお伝えしています。
日本橋の家(大阪市)/設計監理・片岡英和建築研究室
*家族の気配を感じる
吹抜けによって上下階がゆるやかにつながることで、家族の存在を自然と感じやすくなります。
子どもの声。
誰かが帰宅した気配。
キッチンからの呼びかけ。
常に顔を合わせるわけではないけれど、
「ひとりではない」
という安心感をもたらしてくれることがあります。
*空間に余白をつくる
吹抜けは、面積を増やすものではありません。
むしろ、床面積を「使わない」という選択でもあります。
しかし、その余白があるからこそ、
視線が抜け、
空気が流れ、
気持ちにゆとりが生まれます。
住まいにおいて、すべてを効率だけで埋め尽くさないこともまた、豊かさのひとつなのかもしれません。
吹抜けは、住まいに余白や広がりを与える「断面のデザイン」のひとつです。
同じように高さの変化によって居場所をつくり出す手法として、「スキップフロアについて考える|高さが生み出す暮らしの豊かさ」もあります。
どちらも、平面だけでは捉えきれない暮らしの豊かさを生み出す建築的な工夫と言えるでしょう。
カタビラ(京都市)/設計監理・片岡英和建築研究室
□吹抜けを計画するときに考えたいこと
*目的を明確にする
吹抜けを取り入れる理由はさまざまです。
光を取り込みたい
家族とのつながりを感じたい
開放感がほしい
視線の抜けをつくりたい
何を大切にしたいのかによって、吹抜けの大きさや位置も変わってきます。
「なんとなく憧れるから」ではなく、
「この吹抜けで、どんな時間を過ごしたいのか」
を考えることが大切です。
*温熱環境とセットで考える
吹抜けは空間が連続するため、温熱環境にも影響を与えます。
暖かい空気は上昇し、冷たい空気は下へと移動します。
そのため、
高断熱・高気密。
適切な換気計画。
暖房方式。
これらを一体的に考えることが重要になります。
吹抜けだけを切り離して考えるのではなく、
住まい全体の快適性をどう設計するか
という視点が欠かせません。
「吹抜けは寒い」と言われることがあります。
しかし実際には、吹抜けそのものが問題なのではなく、住まい全体の温熱環境をどのように設計するかが快適性を左右します。
断熱性や気密性、換気計画については、「温熱環境について考える|見えない快適性をデザインする」でも詳しくお伝えしています。
*光の取り入れ方を工夫する
高窓の位置や大きさによって、光の質は大きく変わります。
必要に応じて電動開閉窓なども取り入れながら、季節や時間帯による変化を楽しめるよう計画していくことも大切です。
□まとめ
吹抜けとは、単に開放感を得るためのものではありません。
光を届けること。
空気をつなぐこと。
家族の気配を感じること。
そして、住まいに余白を生み出すこと。
それらを立体的に結びつける「断面のデザイン」なのだと思います。
効率だけでは測れない豊かさを住まいにもたらす吹抜け。
どのような時間を過ごしたいのかを思い描きながら、その住まいらしい断面のあり方を考えてみてはいかがでしょうか。
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